開発ストーリー
2011 東日本大震災
ガソリンスタンドには連日長蛇の列、
直ぐにクロスバイクを購入して、片道1時間を超える自転車通勤を始めた。
しばらくしてガソリンの給油は通常に戻ったが、健康のためにも
自転車通勤を続けることを考えたときに輪行という選択肢が思い浮かんだ。
購入を検討して、様々な折りたたみ自転車を候補に上げたが、
通勤時間帯に車内に持ち込むには、どれも折りたたみサイズが大きく、
毎日の通勤で車内へ持ち込むことには無理があると感じた。もっとコンパクトになる折りたたみ構造はないものだろうかと、
折りたたみ構造について考えを巡らすようになった。
一般の横折れタイプは前後の車輪を重ねて配置するため片軸のハブにして前後車輪の片側が密着する構造にしない限り、
奥行30cmが限界であるが、前後の車輪隣接して配置すれば奥行20cmが可能となり輪行時の利便性を劇的に改善することができるのではないかと考えた。
16インチ(305)であれば、横サイズは62cm、縦サイズ62cm、奥行20cmの折りたたみサイズの実現が可能である。
世界最小体積、薄型で持ち運びしやすく、車内での床接地面積が小さい折りたたみ自転車である。
早速、試作車を製作するため16インチの折りたたみ自転車を購入し、
週末は試作車の開発に没頭した。購入した自転車のフレームを切断・分解して溶接し、半年をかけて試作車1号が完成する。
縦に折る構造と2重構造のトップチューブで小さく折りたためる構造を考え、
縦67cm・横67cm・奥行20cmを実現。その後、2号、3号を製作し、ブラッシュアップを図ったが、
目標とする折りたたみサイズには収まらず、折りたたみ操作にも手間がかかるという課題が残り、3号車で開発は断念した。
2011.10 試作1号車
フレームを縦に折る構造とトップチューブを2重にして、折りたたみ時に縮める構造
一般の折りたたみ自転車と比較し1/2の奥行を実現
2012.4 試作2号車
リアフレームとフロントフォークの意匠を変更し、縦・横1cm縮め、軽量なパーツを組み込み11kg台を実現
2012.12 試作3号車
カーボンパーツやフレームにアルミや木材、カーボンを使用することで、軽量化を図り、9kg台を実現。
2013 折りたたみ構造をいちから見直し、開発を再開
被災地気仙沼大島に単身赴任。
復興に向けて奮闘している多くの人たちとの出会いが、
折りたたみ自転車のブランドを創設したいという原動力となり、
再び開発に着手する。
試作車4号の開発には2年を要し、連動して縦に折りこまれる構造、
フレームとシートポストを一箇所で固定する構造、
フロントフォークの折りたたみ構造、
ハンドルをトップチューブに平行に配置する構造などを考え、
目標とする折りたたみサイズに収めることに成功する。
しかし、折りたたみ構造が複雑になり、折りたたみ操作に手間がかかるという課題の解決には至らなかった。
しかし、この4号車で考えた新機構が、理想とする折りたたみ自転車の実現につながる。
2015.5試作車4号
シートポストのクランプを緩めて回転させることでフレームとシートポストのロックが同時に解除される構造
トップチューブを折りたたむ動作と連動してリアフレームが折りたたまれる構造
2016 最終の折りたたみ構造が完成
4号の完成後、簡単な折りたたみ操作を最優先とした5号車の開発に取り掛かる。
4号車で開発した連動して折りたたまれる機構とフレームとシートポストを一箇所で固定する機構を生かして、
4つのピボット部を特徴とする最終の折りたたみ構造が完成する。
フレームの固定はわずか2箇所のクイックレバーの操作で行われる。
その後、6~12号車の制作を通して、折りたたみサイズのさらなるコンパクト化や、走行に関わるトレイルやジオメトリーの改善、
折りたたみ時にチェーンが緩む課題、折りたたみ時のフレームの固定方法などの改良を重ねていった。
開発から10年、試作12号車で自分が理想とした折りたたみ自転車が完成する。
2016.5 試作5号車
2016.11 試作6号車
2017.12 試作7号車
2018.1 試作8号車
2018.10 試作9号車
2019.11 試作10号車
2020.3 試作11号車
2020 CYCLE工房fill を起業
試作車12号プロトタイプ制作用ベースモデルを制作
ムーンクラフト株式会社とプロトタイプを共同開発
開発アドバイザーとして仙台市内のプロショップO氏が開発に関わる
折りたたみ構造について特許を取得
日本・中国・台湾・欧州連合にフレーム意匠登録
ムーンクラフト株式会社とプロトタイプを共同開発
開発アドバイザーとして仙台市内のプロショップO氏が開発に関わる
折りたたみ構造について特許を取得
日本・中国・台湾・欧州連合にフレーム意匠登録
2020.7 試作車12号プロトタイプ制作用ベースモデル
これまで制作してきた集大成
折りたたみサイズ
縦64cm x 横64cm x 奥行20cm
2箇所のクイックレバー操作と
スリーアクションの折りたたみ機構
縦64cm x 横64cm x 奥行20cm
2箇所のクイックレバー操作と
スリーアクションの折りたたみ機構